室蘭市の直近8年間を振り返る~(3)みなと編

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 間もなく始まる、市長選挙・市議会議員選挙に向けて、これまで8年の間に、室蘭がどう変わってきたのかを、市の公式サイト等で公開されているデータを元に、いくつかの観点から振り返る第二弾は、「みなと編」ということで、この8年間の室蘭港の推移を、数値データから追ってみたいと思います。
 なお、本投稿の意図としては、主権者たる市民の立場で、事実とデータに基づく客観的な判断材料を多くの方に共有することを目的としています。
 特定の候補を批判したり、特定の候補を応援する意図はありませんので、予めご了承ください。

<免責事項>
各種数値については、室蘭市が公表している数値を元に、出来る限り正確に記載するよう心がけておりますが、本内容をもとに損害・支障が生じた場合も、一切責は負いませんので、必ず最下段に示す一次情報を元にご自身で検証の上ご利用下さい。

 

外航船が大きく減少

 はじめにご覧いただくのは、室蘭港に入港した船の総トン数の合計値を比較したものです。

 

 平成23年には年間17,295千総トンの入港があった外航船が、直近の平成30年には13,905千総トンとなり、2割近く減っています。内航船も8%ほど減ってはいますが、フェリーが1,191千総トン純増となっており、減少分を補った形になっています。
 外航船が減少したのは、平成26年に当時のJX日鉱日石エネルギーが室蘭での原油精製をやめたことで、原油を海外から運ぶ外航船の入港が減ったことが読み取れます。平成31年以降は、JXTGエネルギーの製造部門撤退と、崎守埠頭チップヤードの廃止によって、外航船・内航船とも入港はますます減少することが予想されます。

船の種類としてはタンカーが減少し、一般貨物船が増加

 次にご覧いただくのは、入港した船の用途別総トン数です。

 

 こちらでも、タンカーがH23の13,065千総トンからH30には7,942千総トンと、大幅に減少していることがわかります。
 一方で一般貨物船はやや増ないし横ばいという状況であり、製鉄所のフル生産体制に伴う鉱石運搬船の入港が堅調であることが伺えます。
 コンテナ船は、H30に崎守埠頭のガントリークレーンが更新されたとともに、それまで隔週だったコンテナ航路が毎週寄港になった関係もあり、H23には246千総トンだった入港数がH30には406千総トンへと大きく伸ばしています。また、フェリーの1,191千総トンも、タンカー、コンテナを別にすると意外に大きな数字であることがわかります。

原油はじめ石油関係の取扱が減少傾向

 最後にご覧いただくのは、品目別海上出入貨物の合計値です。合計値ですので、室蘭港に入ってきたもの、室蘭港から出ていったものの合算値になっています。

 ここで、H23年度の10,976千総トンからH30年度の1,924千総トンへと、実に8割近く減少している「その他」ですが、これは確認したところ、恐らく大部分が「原油」であると考えられます。H26年の原油精製停止に伴い、原油の輸入量が減ったため、H27以降「その他」が激減していると思われます。
 一方で石油製品が増加傾向ですが、これは原油精製停止後、JXTGエネルギー室蘭製造所では石油製品であるナフサを輸入し、そこから様々な石油製品を製造して出荷していましたので、原油がナフサに変わった分の増加があると思われます。ただ、今後石油製品の製造はなくなり、流通拠点としての入出荷しかなくなることから石油製品の扱いは減ることが予想されます。
 また、木材チップもH30年度、928千総トンの取扱がありましたが、これもチップヤードの廃止に伴い、無くなる見込みです。
 気になるのが、鉄鋼原料である鉄鉱石、石炭、石灰石の取扱が減っていることで、製品であるはずの鋼材の扱いも減っています。製鉄業はフル生産体制が続いていると報道されていますが、それとこの数字は一致してないように見えます。

 石油製品と重油、木材チップの取扱量を合わせると、室蘭港全体の4割を超えます。これが激減する見込みであることを考えると、新たな室蘭港の活用策が必要と言えそうです。


<参考>
出典:平成30年(1月~12月)室蘭港港湾統計集計(概数)