室蘭は道南から道央になった?

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 少し前にX(旧Twitter)で、「室蘭は道南か、道央か」という話題がありました。

 この話、歴史や地理的に考察してみると、いろいろ面白かったので、小話的に取り上げてみたいと思います。

はじめに ~室蘭は道南か、道央か。

 道南・道央という言葉は、内地の方にはわかりにくい表現だと思うので、ざっくりと説明します。

 札幌を中心として、小樽~岩見沢あたりまでと、石狩~苫小牧あたりまでのエリアと周辺エリアを「北海道の中央」という意味で「道央」と呼びます。

 その南というか、南西部分が「道南」。北側、旭川から稚内までとその周辺が「道北」、大雪山~日高山脈の北海道の背骨ラインより東を「道東」と呼びます。ちなみに「道西」という表現はほとんど聞いたことがありません。

 室蘭市は、地理的には道央と道南の境界付近に位置しており、ある時は「道南」だったり、ある時は「道央」だったりします。

 天気予報のエリア分けの時は「道南」に割り振られたり、全道区の企業とかだと、「道南支社」「道南営業部」に割り振られたり、「道南バス」のような「道南」を冠する企業が立地してたりしますね。

 でも、最近は「道央」に割り振られているケースを多く見かける気がします。

 

道央とはどこまでか

 もう感覚的な話ではあるんですが、「札幌の経済圏の影響下」にある地域は道央という意識で良いと思います。

 札幌の企業や大企業の札幌支店・札幌支社の営業エリアであるところは道央って話です。その南側にあるのが道南です。

 そう考えた場合に、この話とは、「流通と交通の発達」が背景にあると考えられます。

 通常、企業は「拠点から日帰りできる場所」には拠点を置きません。今は1泊くらいでも置きませんが・・・。

 かつて、室蘭は「札幌から日帰りすることができない場所」だったので、「札幌の経済圏の外」イコール「道南」に含まれていた可能性が高いと思うのです。

北海道が劇的に「縮んだ」この30年間

 高速道路の「登別室蘭IC」が開設されたのが1986年。それまで室蘭には高速が通じていませんでした。

 そして、JRの高速化の象徴である振り子特急「スーパー北斗」の登場が1994年です。

 道南バスが都市間高速バスを走らせ始めるのも1985年頃から。

 今からは考えにくいことですが、今室蘭と札幌を繋いでいる交通手段のほとんどが、この30-40年の間に高速化されてきたということです。

 それ以前は、札幌との行き来には、もっともっと時間がかかっていたということになるんですね。

 その頃は、室蘭の人口もまだ15万人くらいいた時代で、企業の拠点が多く置かれていました。そうした背景から、「札幌とは別の拠点都市」「別の経済圏」、だから「道南の一部」という意識が強いのではないかと思います。

 ですが、都市間交通の発達に伴って、室蘭に置かれていた拠点はどんどん札幌に集約されていきます。あわせて、人口もどんどん減り、現在は8万人を割っています。すると、現在の室蘭は「札幌経済圏の一部」としか見なされなくなった。だから、「道央エリアの一部」と見なされるようになった。おそらく、そんな感じじゃないかと思います。

 そう考えると、現在室蘭市内にある「道南」を冠する企業は、室蘭の繁栄を今に伝える生き証人と言えるかもしれませんね。