室蘭の人口減と、観光業の可能性

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先日、室蘭港立市民大学で講演させて頂いてきました。
今回は、ほぼ初めて接触する層に対するお話というのもあり、観光の話をする前に、「なぜ、今室蘭で観光なのか?」を、少し掘り下げて説明しました。

その説明が割とわかりやすくまとまったように思えるので、一部抜粋してここに掲載します。

減り続ける室蘭の人口と市場規模

室蘭市の人口が今、年にどのくらいのペースで減っているか、おおまかでも把握している人はあまりいないと思います。聞いてみると、今の室蘭の人口を把握していない人も結構いるほどですので。

室蘭市の人口は、約8万3千人です。
正確には、2019年9月末時点で83,289人(住民基本台帳ベース)です。

では、今室蘭市では、年にどのくらいの人口が減っているでしょう? その答えとして、直近10年の人口と世帯数の推移を下に示します。

年度 世帯数 人口 増減
2009年度末 47,835 95,150 △900
2010年度末 47,790 94,216 △934
2011年度末 47,589 93,078 △1,138
2012年度末 47,274 91,726 △1,352
2013年度末 47,069 90,181 △1,545
2014年度末 46,787 88,793 △1,388
2015年度末 46,491 87,569 △1,224
2016年度末 46,101 86,061 △1,508
2017年度末 45,715 84,655 △1,406
2018年度末 45,301 83,150 △1,505

この10年間の平均値を取れば、年1200人ほど。
でも、ここ5年くらいの平均値を見ると、年1500人ペースで減っています。

では、その人口減が本市経済に与えている影響を考えてみましょう。
総務省が毎年調査している「家計調査」によると、定住人口1人あたりが年間に消費する金額は約125万円だそうです。

1500人 × 125万円 = 18億7500万円

年間19億円近く、本市の市場が失われているということです。
こんなことを続けると、年商1億の会社が毎年19社ずつ倒産します。

今、何もしなくても、室蘭は毎年これだけ小さくなっているということです。この状況で若者が未来に希望を持てるでしょうか。

さらに、市は今後、室蘭市の人口が6万人程度になっても大丈夫なように、都市計画などの見直しを行ってますが。。。

人口があと23000人減るということは、このまちの市場規模がさらに290億円近く縮小するということです。

観光を新たな室蘭の産業の柱に

この人口減の問題、室蘭が全国的にも最先端を走ってますが、国も道も課題としてとらえています。だからこそ、国も道も観光立国を唱え、海外からの観光客を呼び込み、それを産業としてこの国を下支えしようとしているのです。国のVisit Japanキャンペーンも、道の観光の国づくり計画も同じです。

でも、僕たち室蘭市民にはなかなか、観光が産業というのはピンと来ません。重工業のまちである室蘭にとって、観光は単価が低すぎるため、なかなか具体的な経済効果が見えにくいのです。

というわけで、観光による経済効果を可視化してみたいと思います。
室蘭市の年間観光入込客数は、2018年度実績で124万人にもなります。それほど観光に力を入れているように見えない現状でも、これだけ来ているのです。しかも、2015年以降、増加傾向です。

例えば、この観光客が一人平均2千円の買い物を室蘭市内でしたら、年間の経済効果は24億8千万円になります。
先程、人口減により年に19億円近く市場が減っていると書きましたが、観光客に2千円、余分に使ってもらえれば、補えるだけのお金が室蘭に落ちるのです。

2千円くらいなら、なんとかなりそうだと思いませんか?
例えば、今年リニューアルした道の駅「みたら室蘭」でランチを食べて、うずらんソフトを食べて、お土産を何か買ってくれたら、ちょうど2千円くらいです。

宿泊ならもっと容易です。宿泊費が1泊1万円近いうえ、泊まるということは夕食を室蘭で食べるということなので。
夕食だと、大人の方なら軽く一杯引っ掛けてもらえれば、すぐ数千円になります。

年25億の売上があれば、年商1億の会社を新たに25社養えます。それぞれが市民を雇用すれば、雇用も生まれ、人口減にも歯止めがかかるかもしれません。

また、観光入込客数が例えば6万人増えて130万人になれば、一人2千円計算でも1億2千万円収入が増えます。

もちろん、製造業に比べれば、その経済規模は小さなものです。でも、すでに来ている観光客に、すでにある地域資源を活用して室蘭でしかできない体験をしてもらい、対価をいただく。そこに大きな資本投入も不要ですし、アイディア次第で個人でも参入できる業種とも言えます。その参入障壁の低さから考えると、若者が自分のアイデアを試すには絶好の土地とも言えるのではないかと思います。

参考データ